“90年代の音楽ファンにとっての(ひょっとして今も)
万能のキーワード「掘る」という言葉の意味は
意外と重たい。英語でも「dig」という言葉が同じ意味で使われるが
レコードや情報を
奥深くまで分け入って探し求めることを指す。だが
掘って出来た穴が
よく見たら自分の墓穴だったなんて場合も
あるんじゃないかと
この10年くらいは思ってきた。掘って出てきた宝物の意味を信じて
掘った分だけかしこくなって
掘った場所から逃げられなくなりそうだから
掘って掘って地獄の底まで掘りまくるしかない。未知の可能性を広げるために掘り続けてきたことが
いつの間にか
自分の周りの壁を高くして
身を守るためだけの行為になっている、なんてね。自分も含めて
こわいものです、それは。
星野源の「穴を掘る」は
そんなことを歌っているわけではないけれど、
たぶんそこのところのあやうさを
知らないうちに知っている歌になっている。歌のエンディングは2行。
主人公は穴の先へとたどりつく。気がつけばそこは 知らないところ
気を強く持てばそこは 知らないところ。2行目の「気を強く持てば」で
”
「知らないところ」に待つ不安が
わくわくした気分へと鮮やかに反転するのが
くやしいくらい見事。